【相続土地国庫帰属制度の条件と注意点】土地を国に引き取ってもらうには

「相続した土地がいらないけど、どうにもできない」。そんな悩みに応えるために2023年4月に始まったのが「相続土地国庫帰属制度」です。一定の条件を満たせば、相続で受け取った土地を国に引き取ってもらえます。

ただし、誰でもすぐに使えるわけではありません。本記事では制度の仕組みや条件、かかる費用、そして他の方法との比較までわかりやすくお伝えします。

どうしてこの制度ができたのか

親から土地を相続したものの、遠くにあって使う予定がない。売ろうとしても買い手がつかない。自治体に寄付したくても断られてしまう。こうした事情で持て余している土地は、全国にたくさんあります。

使わない土地でも、持っている限り毎年の固定資産税はかかります。草刈りや見回りといった管理の手間も必要です。建物が残っていれば、防犯や防災のために自費で解体しなければならない場面も出てきます。こうした土地は「負動産」とも呼ばれ、持っているだけでお金が出ていく厄介な存在になっています。

やっかいなのは、こうした土地がそのまま放置されると、名義変更(相続登記)もされないまま次の世代に引き継がれてしまうことです。何代も放置されれば、最終的に「誰のものかわからない土地」になってしまいます。所有者不明土地問題研究会の推計によれば、このような土地は2040年には約720万ヘクタールにまで増える恐れがあり、北海道本島の面積に迫る規模です。

出典:所有者不明土地問題研究会 最終報告

こうした事態を防ぐために作られたのが相続土地国庫帰属制度です。2025年9月末時点で申請は4,556件にのぼり、利用は広がりつつあります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」 

国に引き取ってもらうための条件

「とにかく国に渡せばいい」と思いがちですが、実際にはかなり厳しい条件があります。大きく分けて「そもそも申請を受け付けてもらえないケース」と「審査の結果、断られるケース」の2つがあります。

申請できない土地

まず、次のような土地はそもそも申請自体が通りません。

建物が建ったままの土地は対象外です。申請前に自分で解体し、更地にしておく必要があります。住宅ローンなどで抵当権がついている土地や、誰かに貸している(賃借権がある)土地も受け付けてもらえません。

ほかにも、道路や墓地など他人が使っている土地、有害物質で汚染された土地、お隣との境界線がはっきりしない土地も対象から外れます。つまり「きれいな更地で、権利関係に問題がない土地」でなければ、申請のスタートラインにすら立てないということです。

審査で承認されない土地

申請が受け付けられた後も、法務局の審査で「引き取れません」と判断されることがあります。

たとえば急な崖(勾配30度以上・高さ5メートル以上)がある土地、廃棄物や放置車両が残っている土地、地下にコンクリートの塊や大量のゴミが埋まっている土地などは、管理が難しいと見なされます。

お隣との間で通行権のトラブルを抱えている土地や、土砂崩れの危険がある土地、手入れされずに荒れた山林なども承認されません。ひとことで言えば「国が引き取った後に、大きな手間やお金がかかる土地はNG」ということです。

申請から引き取りまでの流れ

手続きは大きく5つのステップで進みます。

1.法務局に申請する

土地のある地域を管轄する法務局に、申請書や土地の図面・写真などを提出します。このとき審査手数料として1筆(1区画)あたり14,000円を支払います。

2.審査を受ける

法務局の担当者が書類を確認し、必要に応じて現地の調査も行います。この審査には数か月から1年ほどかかることがあり、その間も固定資産税の支払いや土地の管理は続きます。

3.結果の通知を受ける

審査を通過すると、「承認します」という通知と一緒に、支払うべき負担金の金額が届きます。

4.負担金を支払う

通知から30日以内に負担金を支払います。期限を過ぎると承認が取り消されてしまうため、事前にお金を用意しておくことが大切です。

5.土地が国のものになる

負担金の支払いが完了した時点で、土地の所有権は国に移ります。これ以降、固定資産税や管理の責任を負う必要はなくなります。

どれくらいお金がかかるのか

費用は主に2つです。まず申請時の審査手数料が1筆あたり14,000円。これは申請が通らなくても返ってきません。

もうひとつが、承認後に支払う「負担金」です。これは「国がその土地を10年間管理するのにかかる費用」にあたる金額で、基本は20万円です。ただし都市部の宅地や広い農地ではもっと高くなるこっては100万円を超えるとがあり、場合によケースもあります。森林は面積に応じて計算され、3,000㎡で約30万円が目安です。

さらに、建物の解体費や境界の測量費など、申請前の準備にもお金がかかります。合計すると数十万円から、場合によっては100万円以上の出費になることもあるため、事前の資金計画が欠かせません。

申請すれば必ず通るわけではない

注意したいのは、申請したからといって必ず引き取ってもらえるわけではないことです。2025年9月末時点の統計では、承認されたのは全体の約47%。つまり半分近くは不承認・却下、または申請者自身が取り下げています。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」 

取り下げの中には「自治体が活用してくれることになった」「隣の土地の持ち主が買い取ってくれた」といった前向きな理由もありますが、条件を満たせないとわかって断念したケースも含まれます。14,000円の手数料は戻らないため、「ダメもとで出してみよう」には少しリスクがあると言えます。

他にどんな方法があるのか

国庫帰属制度は、いわば「最後の手段」です。使う前に、他の方法も検討してみましょう。

まず考えたいのは売却です。不動産業者に査定を依頼するのはもちろん、最近は「0円でもいいから引き取ってほしい」という人と「タダならもらってもいい」という人をつなぐマッチングサービスも増えています。売れれば負担金を払う必要がないため、経済的には一番お得な方法です。

相続放棄という手もあります。家庭裁判所に届け出れば、相続そのものをなかったことにできます。ただしこの場合、土地だけでなく預貯金など他のプラスの財産もすべて手放すことになります。また、相続があったことを知ってから3か月以内に手続きする必要があるなど、条件もあります。

空き家や困った土地の処分に悩んでいるなら、専門の買取業者に相談してみるのもひとつです。オハナホーム株式会社では、他社で断られるような物件でも現状のまま買取査定を行っています。解体や片付けを自分でやらなくて済む場合もあるため、制度の利用を決める前に一度聞いてみる価値はあるでしょう。

どの方法がベストかは、土地の場所や状態、他の相続財産とのバランスによって変わります。ひとりで抱え込まず、専門家や信頼できる業者に相談しながら、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

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