遺品整理や生前整理は、家族だけで解決すべき問題だと考えられてきました。しかし、高齢化や単身世帯の増加が進む現代では、整理されないまま残された家や物が、空き家問題や環境負荷といった社会全体の課題へと発展しています。
本記事では、「片付け」が持つ社会的な意味を整理し、私たちにできることを考えます。
整理されない家が増えている背景
日本では65歳以上の人口が総人口の約29%を占め、世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでいます。同時に、核家族化や晩婚化の影響で単身世帯も増加しており、2040年には全世帯の約4割が一人暮らしになると推計されています。
出典:厚生労働省「我が国の人口について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html
こうした変化の中で深刻化しているのが、身寄りのない高齢者が誰にも看取られずに亡くなる「孤独死」の問題です。遺品整理を担うべき家族がいない、あるいは遠方に住んでいて対応できないケースが増え、「誰が片付けるのか分からない」という状況が各地で生まれています。
かつては家族や親族が自然と担っていた遺品整理ですが、社会構造の変化により、その前提が崩れつつあるのです。
放置された遺品がもたらす社会への影響
親が亡くなった後、実家を相続しても住む人がいない。遠方で管理もできない。そうした事情から、家財道具が手つかずのまま残された空き家が全国で増加しています。総務省の調査によると、日本の空き家数は約900万戸に達しており、その多くが相続を機に放置された住宅だとされています。
放置された空き家は、老朽化による倒壊や火災のリスクを抱えるだけでなく、景観の悪化や防犯上の不安を地域にもたらします。内部に残された物品が長年放置されることで、カビや害虫の発生源となることもあり、周辺住民にとっても無視できない問題となっています。
さらに見過ごせないのが、遺品の不適切な処理による環境への影響です。一部の悪質な業者が、引き取った遺品を山中や河川敷に不法投棄する事件も発生しており、その回収や清掃にかかる費用は最終的に社会全体の負担となります。また、まだ使える家具や家電がまとめて廃棄されることで、貴重な資源が失われているという現実もあります。
「片付け」を社会課題として捉え直す
「家の中を片付けたいが、自力ではできない。頼れる家族もいない」
——そうした状態に置かれた高齢者は「片付け難民」とも呼ばれ、福祉や介護の制度からも漏れてしまうケースが少なくありません。介護保険などの公的サービスは身体介助が中心であり、大量の物の整理や処分は支援の対象外となっているためです。
こうした状況を受けて、自治体や民間事業者が連携した取り組みも始まっています。東京都新宿区では、高齢者の孤独死に伴う残置物処理費用を補償する保険への加入を促進するため、保険料の一部を公費で助成する制度を設けています。
出展:新宿区「入居者死亡保険料助成」
https://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/jutaku01_000001_00003.html
「片付け」は、もはや個人や家族だけで抱え込む問題ではありません。行政や専門業者の力を借りながら、社会全体で支えていく発想が求められています。
リユースという選択肢が持つ意味
遺品を単なる「不用品」として廃棄するのではなく、次の誰かに役立てる資源として捉え直す動きが広がっています。フリマアプリの普及や中古品市場の拡大により、古い家具や食器、骨董品などが新たな持ち主を見つける機会が増えました。
大切にしていた品を「誰かに使ってもらえる」「形を変えて残せる」と思えることは、遺族にとっても心の負担を軽くする効果があります。捨てることへの罪悪感が、次につながる安心感へと変わるのです。
オハナホームでは、「想いをつなぎ、笑顔をつくる。」という理念のもと、遺品整理においてもリユースを大切にしています。空き家に残されていたピアノを地元の保育園へ寄贈し、園児たちに再び音色を届けた事例もその一つです。元の持ち主からは「また弾いてもらえるなんて嬉しい」という感謝の言葉が寄せられました。
想いをつなぐピアノ、空き家から地域の保育園への寄付ストーリー
https://ohanahome.jp/archives/1385.html
遺品に新たな役割を与え、地域で活かしていくこと。それは、持ち主の想いを未来へつなぐ取り組みでもあります。