解体の日、家に「さよなら」を言う時間

解体の日に、家にお別れをしていくご家族はどれくらいいるのか。僕が見てきた範囲で言うと、ぜんぶです。解体に立ち会うご家族は、みなさん、そうされます。

解体は建物の工事ですが、ご家族にとっては、家にお別れをする日でもあります。

思い出話のあとに、話が止まる

流れは、だいたい同じです。最初は思い出話から始まります。この部屋で何をしていたか、誰がどこに座っていたか。そのうち話が止まって、誰も何も言わない時間が続きます。最後は、泣かれます。

その間、僕は何もしていません。急かさず、ずっと、ただ一緒にいます。

解体の前に、ご家族に勧めている4つのこと

重機が入れば、もうその家の中には戻れません。なので解体の前に、ご家族に4つのことを勧めています。

その前に、家の中に大切なものが残っていないかの確認は終えておきます。写真、手紙、通帳、権利証、印鑑、お仏壇や位牌、思い出の品。見つかったら手を止めて、どこにあったかを記録してお返しします。ご近所の方へ一言伝えておくことも、あわせて勧めています。

傷みが進んで、中に入るのが危ない家もあります。家の中のことは、安全に入れる範囲で、先に僕らに聞いてからにしてください。

① 写真を撮っておく
外観と一緒に、玄関や台所、柱の傷、窓から見える景色など、毎日目にしていた場所も撮っておいてください。

② 柱や建具など、一部を残す
家を丸ごと残すことはできなくても、柱の一部や建具を外して残せることがあります。残したいものがあれば、工事が始まる前に伝えてください。部材を外す作業にも安全の確認が必要なので、ご家族だけで外そうとせず、先に相談してください。

③ お清め・お祈りをする
解体の前に、お清めやお祈りの時間を取ることも勧めています。どんな形でするかは、ご家族ごとに決めていいと思います。お仏壇や神棚がある家なら、その扱いも工事の前に相談しておきます。

④ 最後に、家の中を歩く時間を取る
工事が始まる前に、もう一度、家の中を歩いてください。部屋を一つずつ回るだけで十分です。この日は予定を詰め込まず、時間に余裕を持たせておいてほしいと思っています。

背くらべの柱を、切って残したご家族

解体に立ち会った家で、柱に鉛筆の線が何本も引かれていたことがありました。線の横には数字と名前。背くらべの跡です。線は少しずつ高くなっていって、ある高さでぴたりと止まっていました。

僕はご家族に「この部分だけ、切って残すこともできますよ」と伝えました。少し驚いた顔をされたあと、「お願いします」と言われました。

その柱は、いま、ご家族の新しい家に置かれています。

全部を残すことはできません。でも、想いの宿った一部を残すことなら、できます。

僕らが「おうちじまい」と呼ぶ理由

僕らは「家じまい」ではなく「おうちじまい」と呼んでいます。どこにでもある「ふつうのおうち」にも、家族の時間が染み込んでいるからです。

おうちじまいは、親御さんが元気なうちから、この家をこれからどうするかを家族で話し、売る・貸す・住み継ぐ・解体するといった方向を整理しておくことです。解体は、その中の一つの道です。

なので僕は、解体を最初の提案にはしません。解体すると、建物はもとの状態に戻せません。建物を残したまま進められる道がないかを先に確かめて、それでも解体を選んだときに、写真を撮ったり、柱を残したり、最後に家の中を歩いたりする時間を一緒につくります。解体のあとも、土地をどうするかは続いていくので、そこまで同じテーブルに置いて考えます。

おうちじまいの考え方は、「おうちじまいとは?」にまとめています。

解体を決めていなくても

まだ解体するかどうか決めていない、という段階でも相談してください。残すのか、手放すのか、決める前の話から一緒に整理します。

電話:0120-087-255(受付 9:00〜17:00・日祝休み)
フォーム:https://ohanahome.jp/contact/

執筆:空き家再生士 きくちまさお(オハナホーム株式会社 代表)

※「おうちじまい」はオハナホーム株式会社の登録商標です。

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