「今日契約しないと、近所に迷惑がかかりますよ」
空き家のことで、こう言われて契約を迫られたら、その場で断るのはとても難しいと思います。
「近所に迷惑」は、断りにくい言葉です
空き家を持っている人にとって、「近所に迷惑」という言葉は本当に重いと思います。
遠くに住んでいると、家のいまの状態を自分の目で確かめられません。何かが起きているのではないか。自分のせいで、誰かが困っているのではないか。そう考え始めると、契約書を読むより先に、早く謝って、早く終わらせたくなります。
その気持ちは、家とご近所のことを気にかけているからだと思います。責める必要はありません。
ただ、罪悪感でいっぱいの日は、大きな契約を決めるにはつらい日でもあります。その場で一度、話を分けてみてほしいんです。
「今日止める危険」と「工事を頼むかどうか」を分ける
急かされたときに分けたいのは、次の二つです。
一つは、本当に今日止めなければならない危険があるのかどうか。もう一つは、その業者さんに工事のすべてを頼むかどうか。
何かが落ちてきそう、建物が倒れそう。そんな切迫した危険があるなら、安全のための連絡や応急の対応は急いだほうがいいです。その場合は、契約の検討とは切り離して、自治体や警察、建物の専門家に安全の確保を相談してください。
でも、今日の危険を止めることと、その場で大きな工事の契約を結ぶことは、同じではありません。
分けて考えるために、その場で次のことを聞いてみてください。
- 何が、どう危険なのか
- 今日中に必要なことは何か
- 見積りには何が含まれているのか
- 今日の応急の対応と工事全体を、別々の見積りにしてもらえるか
- 家族や、別の専門家にも見てもらってよいか
一つずつ答えを聞いていくと、「今日やること」と「あとで決めていいこと」の境目が少しずつ見えてきます。それだけで、考える時間が戻ってきます。
一晩置いただけでなくなる契約なら
見積りや契約書は、いったん持ち帰る。一晩置いて、家族に見せて、別の人にも聞いてみる。それくらいの時間は、取っていいと思います。
断るのが苦手な方は、伝える言葉を先に一つ決めておいてもいいと思います。
「家族に見せてから返事をします。見積書と、契約書の内容がわかるものをいただけますか」
持ち帰る理由を、相手が納得するまで説明しなくてもかまいません。
持ち帰ったら、上の5つの質問にどう答えてもらったかを、見積りの横に書き留めておいてください。家族や別の人に見せるとき、「何が危ないと言われたのか」「今日中に必要だと言われたのは何か」が一緒に伝わるので、話が早くなります。
もし、その時間を取っただけでなくなってしまう契約なら、本当に今日決める必要があったのか、僕は一度立ち止まって考えたくなります。
安全のために必要なことだけをその日に決めて、家の将来に関わる契約は持ち帰る。近所の人のことも、自分自身のことも守るための、ちゃんとした判断だと思います。
急ぐべき安全は急ぐ。でも、不安に押されて、家の先々まで今日決めなくていい。契約書を持ち帰れた時点で、手元には自分で考える時間が戻っています。
もう契約してしまったときは
その場でサインしてしまった、という方もいると思います。
訪問販売で結んだ契約などでは、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、契約をやめられる仕組み(クーリング・オフ)が使える場合があります。自分から来てもらうよう頼んだ場合など、対象にならないこともあります。ただ、見積りのつもりで呼んだのに、その場で契約することになった場合などは、使えることもあります。使えるかどうかは、契約のしかたや取引の形によって変わります。
なので、自分で「もう無理だ」と決めてしまう前に、早めに消費生活センターや弁護士に確認してください。消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどを案内してもらえます。相談するときのために、契約書や見積り、受け取った書面は手元にまとめておくと話が早いと思います。
迷ったときは
急かされて迷ったときは、決める前に一度、相談してください。この家をどうするか、決めていなくても大丈夫です。契約をやめられるかどうかの判断は、消費生活センターや弁護士の領域です。この家をこれからどうするかなら、何を今日決めて、何を持ち帰っていいのか、一緒に分けるところからお手伝いします。
電話:0120-087-255(受付 9:00〜17:00・日祝休み)
フォーム:https://ohanahome.jp/contact/
出典(確認日 2026-10-11):消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/ /国民生活センター「クーリング・オフ」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html /消費者庁「消費者ホットライン188」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
執筆:空き家再生士 きくちまさお(オハナホーム株式会社 代表)